<別荘の居間>


シチリアの西の端、山の頂にある静かな町エリチェ。石畳の美しい町並に魅せられてしばらく滞在するうち、町の人たちとすっかり打ち解けて居心地の良い毎日。
二度目の訪問の時、広場で描いているとコーヒーを飲んでいたおじさんグループの一人が「次はうちを描かないか?」と声をかけてきた。このおじさんは普段は州都パレルモに住んでいて、夏の間はこちらの別荘で過ごしているのだそうだ。夏でも涼しいこの町はお年寄りたちの避暑地でもある。
おじさんの別荘は彫刻やアンティーク家具で飾られた豪華な部屋だった。おじさんは面白がって、中庭でも描きなさい、と結局2枚描かせてくれた。日本に持って帰る約束で描かせてもらったのだけれど、描き上がってみると「やっぱりほしい」と言われて困ってしまった。結局、大きくプリントしたものをお送りすることで合意した。その日は預けて帰り、翌日訪問すると、「一晩楽しませてもらったよ」と笑顔で迎えてくれた。